番外:裁ち間違い

クリニックとは関係ありませんが、珍しいモノが入荷したので記録しておきます。 柄付けが少しおかしいです。着物のことをよく知らない人でもわかるんじゃないでしょうか。 右背(中央右寄り)の下の柄が上下逆さまです。右袖も逆ですね。左背(中央左寄り)…

もやぼかし「K社T5」

古い色留袖で、シミがひどいです。 このようにかなり広い面が変色してしまっていて、シミ抜きができません。 「抱きジミ」と呼ばれる卵型のシミが両胸にできています。 その拡大 非常に汗をかきやすく、シミの出やすい場所です。 地色を染めることによって、…

目引き依頼「I社218」

若いときに作った着物が派手になったので、地味にしたい。 よくある依頼です。 この小紋も赤が強いですね。 伝票には「薄いグレーをかける」と書いてあります。 しかし、薄いグレーをかけてもあまり効果はありません。 パソコンでそのイメージを作ってみます…

匂い袋による変色「E社」

久しぶりに興味深い事例に出会いました。 畳んだときに重なり合う部分を貫通するように変色しています。 畳紙も変色してしまっています。 また、着物を広げたときに独特の芳香臭がしました。 匂い袋による変色と見て間違いないでしょう。 ただし、その成分は…

50歳地味に「Y社5484」

赤系の柄色が派手なので地味にしてくれという依頼です。 ただ、妙な指定があって、 「大きな柄だけ彩色せよ。細かい柄は彩色しなくていい」というのです。 全部彩色するよう強く勧めましたが、聞いてもらえません。 じゃあ、なぜ全部彩色しないといけないの…

樹脂吹雪「K社22-9」

前回のロウケツ吹雪に続いて今回は樹脂の吹雪です。 「乗せの」吹雪といってロウケツと区別することもありますが、 捺染あるいは染型を使った吹雪と混同することがあり、 やはり「樹脂の」という表現が適当だと思います。 前回でいう A)地色はそのままで吹…

ダック商品にロウケツ吹雪「Y社M58」その2

これが染め上がりです。 吹雪といわれる斑点状の模様の色は元の地色です。 蝋を置いたので、染まらずに残っています。 濃い地色は新たに上から染めたものです。 誤解が多いのがここで、 A)地色はそのままで吹雪を乗せる B)吹雪を入れて地色を染める これ…

黒色上げ「O社F571」

前回の日記で、クリーム色の振袖を黒地に替えるところを見てもらいましたが、 今回はその応用編です。 黒留袖です。 写真では分かりづらいと思いますが、地色が褪せてネズミ色になっています。 紋のところを見てもらいましょう。 明らかに紋の周囲と地色の色…

地色を黒に「I社521」その3

さあて、立派にできあがりました。 牡丹色(やや紫がかった鮮やかな赤)と黒の相性もいいです。 巻きボカシにすると不恰好になる伸びた枝のところも きちんと伏せて(柄が染まらないように防染して)染めれば全く問題ありません。 いやあ、こっちの思いを先…

ダック商品にロウケツ吹雪「Y社M58」その1

しまったなあ、加工前の写真を撮りませんでした。 でも、手をかけるのは地色の部分で、柄のところはさわりませんから、 吹雪に関してのトピックという意味では問題ないはずです。 吹雪というのは、細かい斑点状の模様を言いますが、 吹雪加工は3種類の方法…

地色を黒に「I社521」その2

柄を伏せる準備です。 「伏せる」というのは、加工が及んではいけない部分を覆って養生することです。 これは地色は黒にしたいのですが、柄はそのまま残したい。 だから、柄部分に防染用の糊を置いて染まらないようにしないといけません。 「じゃあ、柄を伏…

背景色を地味に「T社4009」その2

加工ができました せいぜい細かいところまで頑張って入れました。 ほぼ予想通りの上がりです。 ふーん、これで気に入ってもらえるのでしょうか…。(前を読む)

背景色を地味に「T社4009」その1

このバックの朱色を地味にしてくれという依頼です。 問題は、指定の色が相当に濃いのです。 ・仕立てたまま加工せよ ・指定の色にせよ この両立が難しいのです。 ご覧のように松葉が細かく入り組んだ柄ですが、これは金彩です。 染料で金属は染まりませんの…

地色を黒に「I社521」その1

振袖です。 シミを隠したいので、地色を染めたいというご希望です。 写真ではわかりませんが、たくさんカビ跡があります。 最初はねずみ色という希望でしたが、シミが隠れません。 紆余曲折あって、黒ということになりました。 で、最初は巻きボカシにして欲…

柄の粘着

柄の粘着です。 この手の加工は粘着や剥離のトラブルが多く、工場の殆どがクレーム処理が経営を圧迫しつぶれました。 それと、最近の安物はインクジェットが主流で、こういう刷り込みの加工はめっきり減りました。 本物の友禅は多くの工程を踏む必要があるの…

赤を地味に「T社T外1」その3

その後、赤い部分に「渋金」と呼ばれる全く光沢のない金砂子を入れ、 尚且つ、白を塗ったためにピンクになった部分を藤色系に彩色。 様子を見ながら少しずつ進めたので、大層時間がかかりました。 通常の彩色仕事の3倍ほどの手間賃で見積もりをしていたので…

派手な地色「K社A-3」その2

まあ、そこそこグリン系になりました。 もっとどす黒くなるかと思ったのですが、これなら上出来です。 全体の色合いに統一感が出て、最初よりはうんと良くなりました。(最初から読む)

赤を地味に「T社T外1」その2

様子を見ながら少しずつ作業を進めているので、なかなか捗りません。 地味にすることをまだしていないので、変わり映えしないように見えますが、 どうかなあ、赤の量的バランスとしてはこんなものかなあ。 牡丹を白くしたのは効いてる。 じゃあ、これであと…

大きなシミ「O社K-197」その2

ふむ、 柄足しも金加工も、思うように上がってくれた。 これならまあ、お客様にしても文句のないところでしょう。 (最初から読む)

大きなシミ「O社K-197」その1

男児用初着です。全体にシミが出ています。 特に左脇のシミがひどい。 ここまで茶色くなると、シミ抜きで直るものではありませんが、 それでも、シミ抜きに出せば直ると思っている人は少なくありません。 上から加工を足して隠すことにしますが、一通りのこ…

赤を地味に「T社T外1」その1

赤を地味にしてくれという、割とよくある依頼です。 普通なら、そのまま彩色で地味にして終わりです。 他の工場でも恐らくこれもそういう判断をして、地味に彩色をするでしょう。 そうしないところが、経験豊富な弊社。 赤さが派手なのではなくて、赤の量が…

京縫い附下「O社」

非常に高価な色無地なのだそうです。 その地紋。 これに手刺繍で柄を入れて、色無地と附下の中間ぐらいのものを作りたいという注文です。 ミシンでは駄目で、手刺繍というたってのご希望です。 値段が随分違いますが、それでも構わない、やってくれというこ…

赤い花を黒く「N社」

これと一緒に同じ部分をコピーして指示を書き込んだ紙を持ってこられました。 いくつかの柄を黒く塗りつぶしてくれというものです。 柄色を地味にしてくれという依頼は日常的によくありますが、塗りつぶせというのはひどい。 柄が消えてなくなると思っておら…

派手な地色「K社A-3」その1

またキレイなオレンジの地色ですね。 それに柄色がグリンで、補色といっていいような色です。 この地色を左の色見本の←印の色にしてほしいという依頼です。 染色というのは、上から色をかければその色になるわけではなく、 必ず元の色の影響を受けます。 脱…

ごあいさつ

本家のホームページに掲示板を設けておりましたが、 あまり書き込みがないのと、写真を扱い難いので開店休業状態でした。 やはり、こういう仕事の様子は画像がないと伝わりません。 そこで、[悉皆屋]ホームページ別館としてブログを開設しました。 持ち込ま…