目引き依頼「I社218」

若いときに作った着物が派手になったので、地味にしたい。
よくある依頼です。

この小紋も赤が強いですね。
伝票には「薄いグレーをかける」と書いてあります。
  
しかし、薄いグレーをかけてもあまり効果はありません。
パソコンでそのイメージを作ってみますと

このようになります。
ほとんど印象は変わりません。
よく見比べてようやく色の違いが認識できる程度。
  
もっと濃くしてみましょうか。

ここまで濃くするとそこそこいい感じにはなりますが、
まだ赤みが気になるのと、柄が消えそうになっています。
  
色相と濃度の関係を考えてみましょう。
三原色の赤、黄、青を並べて白黒写真に撮ったとしましょう。
赤は黒っぽく、黄色は白っぽく写っているはずです。
赤が白っぽいならそれはピンクを通り越して桜色なのでしょう。
濃い黄色というものもなくて、それは原色の黄色と較べると、赤みが加わってオレンジがかっているはずです。
また、絵具の黄色に黒を加えると、それは利休色という、黄緑のような色になります。
赤みを抑えようとして色をかける場合、グレーをかけるというのも悪い考えではないのですが、
多色使いの場合、ほかの色目ばかりが地味になってしまって、
赤みは最後の最後までなかなか思うように地味になってくれません。
また本件の場合、一方の色がグリン系で赤の補色ですので、尚のこと赤がきつく感じます。
  
作戦としては、赤茶系の色をかけて、全体に赤〜茶系の色に統一することです。
グリンの中に赤があるのと、茶のなかに赤があるのとでは、同じ色でも印象が違います。
お客様にはその方向で了解を得ましたので、それで進めてみることにしましょう。