黒色上げ「O社F571」

前回の日記で、クリーム色の振袖を黒地に替えるところを見てもらいましたが、
今回はその応用編です。

黒留袖です。
写真では分かりづらいと思いますが、地色が褪せてネズミ色になっています。
紋のところを見てもらいましょう。

明らかに紋の周囲と地色の色が違ってしまってますね。
(写真は紋糊が置いてあります。
 紋のところが染まらないように、紋の形にゴムを置きます)
なぜこんなことになるかというと、
黒留袖は殆ど全て石持ち(=こくもち。後でどんな紋でも入れられるように丸く染め抜いてある)なので
紋がまん丸でない限り、余った周囲を塗りつぶさないといけません。
その材料と、地色を染める染料が違うので、変色の仕方に差異ができてくるわけです。
  
地色は全体に褪色するので目立ちませんが、紋のところは非常に目立ちます。
これを目立たなくしてくれという依頼がありますが、
これは紋の周囲だけチョコチョコ触って直るものではありません。
どうしても地色全体を染めないと直りません。
  
これは先の地色替えと同じ方法で黒を再度染めると改善されます。
今回のはネズミ色になってますが、
よくあるのは「羊羹色」と表現されますが、赤み、赤茶系に変色します。
「仕立てたままヤケ直しをしてくれ」と依頼されることもありますが、
黒だけは、まず色が合いません。
他の色のように調合して調節することができないからです。
それと、色が十分に止まりませんから、着用中に色落ちします。
どうしてもきちんとした染色をしないといけないのです。