京縫い附下「O社」


非常に高価な色無地なのだそうです。
その地紋。

  
これに手刺繍で柄を入れて、色無地と附下の中間ぐらいのものを作りたいという注文です。
ミシンでは駄目で、手刺繍というたってのご希望です。
値段が随分違いますが、それでも構わない、やってくれということで、
手刺繍としては10年に1件あるかなしの大仕事です。
  
最初に草木柄、花柄などの図案をお見せしましたが、気に入らない。
この地紋を活かしたものにしたいという意向です。
じゃあ、菱型の割付文様(わりつけ=幾何学模様)にしようということで、話が固まってきました。
  

雛形(ひながた)。全体の構図を見るものです。

図案。菱型に収まる割付文様を色々描いてみました。
その中から若松の菱と、桧垣風のが選ばれました。
後は同系色という指定を聞いた以外は一任してもらいます。
こういう仕事は職人さんにある程度任せたほうが、その意欲をかきたてるので、いいものができます。
  
約1ヶ月、ようやくあがってきました。


下の桧垣風のものなど、京縫いの面目約如ですね。
実に多彩な技法がつめ込まれている。
一度京縫いの技法を紹介した本を見せてもらいました。
実布添付で、何十万円もするごっつい本です。
その技法は百種にも及びます。
消費者は縫い方を指定しようにも、それだけの技法があることすら知らないわけです。
今回の仕事は、職人さんの「見てくれ!」という意気込みが伝わります。