地色を黒に「I社521」その2


  
柄を伏せる準備です。
「伏せる」というのは、加工が及んではいけない部分を覆って養生することです。
これは地色は黒にしたいのですが、柄はそのまま残したい。
だから、柄部分に防染用の糊を置いて染まらないようにしないといけません。
「じゃあ、柄を伏せないといけないのに、写真は逆じゃないか」と言われそうです。
さにあらず。
  
青く見えるのは、「エンブタ」と呼ばれるビニールのような粘着シートです。
巨大なビニールテープみたいなもんです。
漢字で「縁蓋」と書いてあるものを見ますが、正確な漢字なのか当て字かわかりません。
その用途はマスキングですから、字義は合ってますけどね。
  
このエンブタで柄の「周囲を」伏せます。
その後柄の上に「伏せ糊」という防染用の糊をヘラで盛ります。
生乾きの状態で、エンブタを剥がすと、柄の上だけに糊が乗っているというわけです。
我々の取引先さん(中間業者)にも、これを勘違いしている人は多く、
エンブタで「柄を」伏せると思っている人は少なくありません。
ではなぜエンブタで柄を伏せることができないのでしょうか。
  
エンブタはセロテープほどの粘着力しかありませんから、枝先や水玉など細い部分になると食いつきが弱くすぐめくれます。
染色という作業に耐えるだけの粘着力がありません。
また、生地の表面に乗っかってるだけで、繊維にガッチリ食いついてるわけではありませんから、
側面から染料がもぐり込んでしまい、十分に防染の役割を果たすことができません。
やはり糊で伏せないと染色という作業はできないのです。
  
本来なら「筒」と呼ばれる道具で(後日詳説する機会があるでしょう)
柄部分を塗りつぶすように手作業で糊を置いていくのですが、
エンブタを使ったほうが簡便でコストを抑えることができます。
また、物が糊ですから、乾くとパリパリになって、割れたりめくれあがったりします。
そうすると染色時に柄部分を汚染してしまうので具合が悪い。
エンブタを使うことで、糊を扱う時間を短縮することができ、糊割れの防止になります。
また、シゴキや引染という話がありますが、これは後日に譲りましょう。
  
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